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少年のダメージゾーンに六枚目のカードが置かれる。トリガーは無し。
これは、ユウトの勝利を意味していた。
ユウトが少年とファイトするに至った理由を簡単に説明しよう。
ユウトとヒカリがファイトを終えると、周りの客達はユウトに声を掛けてきた。
プロファイターの先導ユウトさんですよね。ファイトしてくれませんか、と。
ユウトは寸秒待たずにOKし、別の席に移り、彼らとファイトを始めた。
ヒカリが居るにも関わらず。
「はぁ…」
ヒカリは呆れてか、嫉妬か、重いため息を吐く。
そんなヒカリを見て、エンキがユウトが座っていた椅子に座った。
「彼女をほっぽり出して他の人とファイトするとか…、ヒカリちゃんもこんな奴に惚れちゃって大変だね」
「まあ、確かに…」
ヒカリはそう言い、苦笑する。
ユウトは根からのヴァンガード馬鹿。ファイトを挑まれたら断らない。
「でも、私はそんなユウトさんだからこそ好きになったんです」
ヒカリは続ける。
「ユウトさんはヴァンガードを通じて私に笑顔をくれた、元気をくれた、希望をくれました。私が無くしていたものを与えてくれたんです」
ヒカリにとってユウトは希望そのもの。姉のミキと同様に欠くことのできない存在なのだ。
だから好きになった。だからずっと一緒にいたいと思った。
その話を聞いたエンキは共感するように頷いた。
「ヒカリちゃんの言う通り、アイツは希望だ。僕も昔、ユウトに救われたことがある。僕もユウトを失いたくない」
と、客達と楽しそうにファイトするユウトの方を見やる。
「だからもう無茶するなよってヒカリちゃんからキツく言っといてね」
エンキは冗談めかしに言う。
ヒカリは微笑んで頷いた。
その直後だった。
ユウトのケータイが鳴ったのは。
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