#01

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「失礼します…」 翌日。 ユウトはそう言いながら、大きめのドアを開けた。 ユウトが訪れたのはVFIHから世界リーグまで、ヴァンガードに関する全てを管理するVF協会の日本支部。 そして、ユウトが入っていったドアの前には会長室と書かれていた。 「君が先導ユウト君だね。君の活躍は聞いているよ」 ユウトが部屋に入ると、奥の机に座っていた男性が微笑みながらそう話してくる。 彼は梶谷シモン。VF協会日本支部の会長室であり、VF協会本部の副責任者も務める有名人。 彼自身も元プロファイターであり、現責任者とともにVF協会を設立した起業家でもある。 体は細めで、顔立ちも含め四十代に見えるが、既に還暦を迎えていると言う。 そんな彼が昨日、自らユウトに電話を掛けてきた。 「俺、何かやらかしましたか?」 ユウトが開口一番に発したのは、疑問だった。 会長直々の呼び出しだから無理もない。 おまけに内容も知らされていない。 ユウトのそんな反応を見て、シモンは掘りのある顔を少し微笑ませ、 「そうではありません。君を呼んだのは、君に頼み、いや、スカウト、選出するためです」 「スカウト…?選出…?」 シモンは頷き、こう言った。 「君をWVCの日本代表の一人としたいのです」 ワールドヴァンガードサーキットーー通称WVCは出場国の代表三名を選出して行われる大型国際大会。 プロファイターだけでなく、全ファイターなら誰もが憧れる大会だ。 本来ならユウトも喜ぶところなのだが、あまりにも急であるため、様々な疑問が生まれる。 「ちょっと待ってください!なんで俺なんですか?俺以上のファイターなら幾らでも…」 ユウトはプロファイターと言ってもまだ新人。 キャリアを積んだファイターはごまんといるはずだ。 シモンはその疑問に答えた。 「簡単なことだ。君が強いからだ」
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