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「失礼します…」
翌日。
ユウトはそう言いながら、大きめのドアを開けた。
ユウトが訪れたのはVFIHから世界リーグまで、ヴァンガードに関する全てを管理するVF協会の日本支部。
そして、ユウトが入っていったドアの前には会長室と書かれていた。
「君が先導ユウト君だね。君の活躍は聞いているよ」
ユウトが部屋に入ると、奥の机に座っていた男性が微笑みながらそう話してくる。
彼は梶谷シモン。VF協会日本支部の会長室であり、VF協会本部の副責任者も務める有名人。
彼自身も元プロファイターであり、現責任者とともにVF協会を設立した起業家でもある。
体は細めで、顔立ちも含め四十代に見えるが、既に還暦を迎えていると言う。
そんな彼が昨日、自らユウトに電話を掛けてきた。
「俺、何かやらかしましたか?」
ユウトが開口一番に発したのは、疑問だった。
会長直々の呼び出しだから無理もない。
おまけに内容も知らされていない。
ユウトのそんな反応を見て、シモンは掘りのある顔を少し微笑ませ、
「そうではありません。君を呼んだのは、君に頼み、いや、スカウト、選出するためです」
「スカウト…?選出…?」
シモンは頷き、こう言った。
「君をWVCの日本代表の一人としたいのです」
ワールドヴァンガードサーキットーー通称WVCは出場国の代表三名を選出して行われる大型国際大会。
プロファイターだけでなく、全ファイターなら誰もが憧れる大会だ。
本来ならユウトも喜ぶところなのだが、あまりにも急であるため、様々な疑問が生まれる。
「ちょっと待ってください!なんで俺なんですか?俺以上のファイターなら幾らでも…」
ユウトはプロファイターと言ってもまだ新人。
キャリアを積んだファイターはごまんといるはずだ。
シモンはその疑問に答えた。
「簡単なことだ。君が強いからだ」
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