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ナツキは大声で、しかも口早に怒鳴る。
店内にいる客やスタッフがこちらを振り返るが二人はお構いなしだった。
ミキは動揺もせずに沈黙すると、やがて重い口が開いた。
「…ナツキ、あなたにはヒカリを守ってほしかったの」
それが今のミキの答え。
ナツキにとっては言い訳にしか聞こえない答えだが、ミキにとっては正答であり、切実な願いだった。
「なら、アタシよりミキがヒカリちゃんの傍にいた方が良かったんじゃないの?」
「…そうするためよ」
「そうするため?」
「私はヒカリを守るために二年間、力と知識をつけてきたの。あのときの私じゃ、守れなかったから」
「じゃあ、アタシはそれまでの繋ぎだったってこと!?」
「ええ、そうよ」
はっきりと認めた。
その回答にナツキの怒りは頂点に達するかと思われたが、意外にも落ち着いていた。
「…ミキらしいね、全く…」
そう言って椅子に着いた。
ナツキはミキの回答の本当の意味を理解したのだろう。
長年の付き合いがある二人の間には無駄な言葉はいらない。
ミキがコーヒーを啜るのを見て、ナツキはまたコーヒーを啜る。
一口飲み終えたナツキはカップを置いてこう言った。
「やっぱコーヒーじゃなくてジュース頼めばよかった…」
「次はどこに行こうか」
ユウトとヒカリは試合を終えたその足でショッピングモールに来ていた。
目的はもちろんショッピング。
そしてデートだ。
親善試合は午前で終わったため、午後からは時間があったのだ。
「じゃあ、次はあそこに行きたいです!」
ヒカリも腕に抱きつきながら、明るい声で洋服店を指差す。
ユウトがプロファイターとして試合が忙しく、なかなかデートができないため、ヒカリは目一杯甘えている。
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