チーム・氷室へ

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 席に戻って、午後からの作業を再開する。  新しい部署といっても、仕事的にはそれまでいたプロ企と大差なかったので基本的な事務作業はそつなくこなす事が出来た。  それまでと違って少し大変になったのは、プロ企では私の他3人のバイトで手分けしていた社員さん達の雑用が、ここでは私1人にかかって来たって事。  コピー取り・お茶配り・電話の取次・配送物の代理受け取り、あたふたと時間に追われるようこなしているうち、あっという間に終業時間になった。 「お疲れ様ぁ」 「あ、お疲れ様でした」 「お疲れ様ぁぁ~、ってコトで、さ~きちゃん」 「はい」 「キミさえよければ、これから行きつけの居酒屋に行ってキミの歓迎会、でもどうかと思ってるんだけど?」 「あ~、悪いな、こいつ酒は全くダメなんだ」  と、執務室から出て来たボスが私に代わって素早く応えた。  けど、倉石さんは不満顔。 「オレ、さきちゃんに聞いたんですけど?それに何ですか? ボス、いきなり初日から”こいつ”呼ばわりするなんて、パワハラですよぉ」  ボスは、ちょっと鈍感な倉石さんにまるで”こいつはオレのもんだ”と誇示するよう、私の真後ろに立ち止まり私の肩へ手を置いた。 「それに今夜は先約がある。な? 米倉」  え? そう、でしたっけ……。 「だからぁ、ボスには――」  鈍感な倉石さんに代わって、ボスのリアクションひとつで早くも私達の関係に気づいた風な寺沢さんがこの話題を締めた。 「あ~、分かりました。じゃ、歓迎会はまた次の機会にって事で」 「え~、どうしてっすか寺沢先輩」 「お前には俺達がつきあってやるから」 「じゃ、お疲れ様でしたぁ」 「あぁ、お疲れさん」  寺沢さん達が賑やかに出て行った後は、私とボス2人きりになった。  ボスはさっき私の肩に置いた手をそのまま前へ回して、ふわっと私を抱きしめた。 「あ、ボス――」 「コラ、2人きりの時は違うだろ?」 「でも、まだ会社だし……」    「…………」  ボスは試すような視線で私を見つめ続ける。 「……氷室部長」 「それも違う」 「え、でも……」 「寂しいなぁ、せっかく恋人に1秒でも早く癒して欲しくてさっさと仕事片付けたのに、こんなちっぽけな願いさえ聞いてもらえないのか……」  と、私の耳元へ唇を寄せ耳を軽く甘咬み。  出そうになった声はとっさに堪えても、体がピクッと震えた。 「ホント今日は初日で色々気疲れしてるだろうから大人しく帰るつもりだったんだけどな。さきのこんな顔見てたら、無性に欲しくなった」  って、私今、どんなカオしてるんだろ……?  わざと焦らすみたいに、ギリギリの距離で私をじっと見つめる。 「キスして? さき」   私はそんなボスの甘い囁きと誘うような視線に負けて、自分から唇を重ね合わせた。
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