実咲の初仕事

1/5
前へ
/109ページ
次へ

実咲の初仕事

 そして、指折り数えて迎えた月曜日。  私はいつものように出社してメンバー達への朝茶を配り終えた所で、ボスの執務室へ呼ばれた。  ――トン、トン。 「米倉です」 「あぁ、入ってくれ」 「――お呼びですか?」 「――これが、何だか分かるか?」  そう言ったボスの手には1枚の名刺サイズのカードが持たれていた。 「……ショップ、カード、ですよね?」 「そうだ――アクエリアスのな。デザインを一新したいという依頼が来たんだが、担当の冬木は今秋冬物のカタログ制作で忙しい……お前、やってみるか?」 「えっ――い、いいんですかぁ?!」 「お前の初仕事としてはちょうどいい題材だろう」 「頑張りますぅ」  やったぁ☆私の仕事第1号だよ~。  と、見本のショップカードを手にして初仕事の感動にうち震える私を見て、ボスは苦笑いを浮かべつつ言った。 「この1ヶ月、お前なりに努力してきたものな。ただ与えられた仕事をこなすだけでなく、少しでもメンバー達が心地よく仕事出来るように工夫してた」  ボスぅ……私の事、ちゃんと見ててくれたんだぁ、気にかけてくれてたんだぁ……。 「ま、誰もお前に満点は望んじゃいない。課題だと思ってやってみろ。小さくまとまらずにな」 「――はい」  それからオフィスの自分の席へ戻った私は、早速もらったばかりの仕事にとりかかった。     シンプルな物ほど難しい。  ロゴの大きさ・色・その位置、書体は? 級数は?  それだけでも可能性は無限大。  その中で私なりのベストへ近付く為には――――。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加