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オフィス・アルファ、自社ビル、地下パーキング。
一隅で、私は壁に追い詰められた恰好でボスと口付けを
交わしていた。
(俗に言う”壁ドン”ってヤツ)
「いきなり、こんなの反則――」
「して欲しそうだったから」
恥ずかしさにぽっと火照った顔は伏せがちにボスを押し返した。
「じゃ、して欲しくはなかったか」
「もうっ、イジワル……」
ボスはふふっと笑って私のおでこへもチュッとキスを落として。
「そうあからさまにビビるな、何も捕って喰おうってんじゃない」
と、私から離れ自分の車のロックをリモコンキーで解除して。
「送って行こう。??のアパートでいいな?」
私はそのボスの背をぼんやり見つめ心の中でそっと呟く。
”何か、余裕よねぇ……”
ボスの車でアパートまで送ってもらう途中の車内。
私は車窓に映る運転中のボスの凛々しい横顔を
見つめながら考える。
”ああゆう時、17才の年の差を痛感してしまう。
私なんか、あの夜以来この人の一挙一動に
振り回されっ放しなのに……さっきのキスだって。
でも、ボスはキス以上の事はしてこないし……って、
だから、べべ、別に不安ってわけじゃ……”
=== === ===
『会社の上司ではなく氷室柊二としてのオレを知りたいか?
――だが、全てを知りたいならそれなりの覚悟を決めろ』
=== === ===
覚悟を決めれば、ボスと私の関係も進む――?
自分が思い浮かべた”関係”という単語に、
かぁぁぁっと頬が染まる。
関係って、私ってば、何考えてんだろ……。
自分の心の中だけで勝手に妄想全開状態になりかけ、
ますます赤面。
「――さっきから1人で何やってる?」
笑い含みの問いかけと共に、ニュッと伸びてきた
左手でクシュクシュと頭を撫でられた。
「あ、べ、別に何も……」
そうやって慌てて否定する様もボスにとっては笑いを
誘うものだったらしく。
苦笑するボスの目尻には生理的な涙が滲んでた。
「ホ、ホントに何でもないですってばぁ」
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