手痛い失敗

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   仄かにハーブ系のボディーソープの香りを漂わせ、  バスルームから出て来たバスローブ姿の氷室が  傍らへ座った頃には、  実咲はスゥスゥと規則的な寝息をたてぐっすり  眠り込んでいた。  そのあどけない実咲の寝顔を愛おし気にじっと見つめ  そうっと静かに自分の膝枕で横たわらせて、  「おやすみ」と呟いてその額に優しく口付けを落とした。   ***  ***     耳慣れた、けど今日は結構遠くから聞こえてくる  街のノイズ(雑音)で私は目が覚めた。  ぼやける視界には見慣れた室の天井と、  この世で一番愛おしい人の端正な顔立ちが見えた。    「――おはよ、良く眠れたか?」  髪を撫でられ、ふと気付く。  自分を優しい眼差しで覗きこんでいる柊二さんの  角度を考えると自分の右耳の辺りは柊二さんの腹部に  なるわけで…… 「…………??」 「どーした?咲」  頭の下は上質なタオル地のバスローブで、  言うなれば自分は  柊二さんに膝枕をさせている――!!  そこまで今の状況が分かってきてハッとした。  !!ヤバイっっ。  「遅刻っ!」 ガツッ?!★  目の前で火花が散った。 「ぬあぁっ――?!」  柊二さんはソファーの背もたれへ沈み悶絶。  何も考えずにいきなり半身を起こした私は、  覗き込んでいた柊二さんの顎へ  強烈な頭突きを喰らわせてしまったのだ。 「う”ぐぐぐ――――っ……」 「あ、わわわ――私ったら、どーしよう――  ご、ごめんなさい。痛かった、です、よね?」  私が慌てふためき、頭突きをかましてしまった  柊二さんの顎を手で撫でると柊二さんは苦笑いした。 「……おかげで、目覚めスッキリだ」 「……あの、それで、私昨夜は……?」  亘さんのお店からほろ酔い加減で出て、  いつものように柊二さんの車で  このマンションに来た、所までは覚えてる。
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