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「お前お人好しでトロいから、気が付かないだけなんじゃ
ないか?そうだなぁ~――よし、今度ボクが仕事の依頼
装ってそれとなく探ってやるよ。ひどい目に遭って
からじゃ遅いからな」
「そんな、ひどい目にだなんて……」
そう言えば、なっちゃんは昔から心配性な所があって。
それが何故か私の事になると尚更で。
昔も良く同じような事を言われた気がする。
「ところで、なっちゃんは今どんな仕事してるの?」
「イベントプロデュースの会社を経営してる」
「へぇー、すごーい。社長さんなんだぁ」
「(苦笑)ま、そんなトコだけど、創業してまだ間もないし
小さな会社だから」
「でも、凄いよ」
凄いを連発する私に、なっちゃんは謙遜した笑みを
浮かべこう言った。
「なぁ、実咲。ホントはお前今の仕事向いてないんだろ?」
そのなっちゃんの言葉で、私の脳裏に疑問符がちらつく。
「何だったら、ボクの会社へ来ないか?」
「ええっ――あ、ありがと、でも、今のままでいいから」
「はぁ~~(ため息)実咲は昔からそうやって何でも
我慢するんだよなぁ」
「我慢だなんて――」
「ボクには分かってる。とにかくボクがまず様子を見て
あげるから、話しはそれからだ。
だいたいさ、そのボスってのが一番怪しいよ」
「怪しい??」
一体、面識すらない柊二さんの何を知って”怪しい”と、
そこまで言い切れるのか?
私の心にはなっちゃんに対しての猜疑心が芽生え
始めていた。
「だってそうだろ?お前今のセクションへ新加入させたのは
そのボスのほとんど独断だったそうじゃないか」
そう言われてしまうと、反論の余地はないけど。
私の加入当初 ”ボスのおきに”とか”ペット”
とかって言っていた、冬木さんでさえ今ではちゃんと
私の実力を認めてくれているし。
何より、ほんの少しでも会社や皆んなの
役に立ててるって事が嬉しいんだ。
「そんな会社、一刻も早く辞めるべきだよ。理由なら
何とでも付けられるだろ?ボクを頼ってくれてもいいぞ」
結局この日はあんななっちゃんの独りよがり的な
思い込みの数々を吐露され、別れた。
あぁ――もし、また、なっちゃんからお誘いの電話が
あったら何って言って断ろう?
気が重いな……。
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