幼なじみのなっちゃん

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  「――ただいまぁ」  玄関先で向かい合いざま、とりあえず”お帰りなさい”の  キスを交わす柊二さんと私。  最近私は週のほとんどを柊二さんのマンションで  過ごしている。  根岸のアパートに帰るのは、部屋の換気をする時と  着替えを取りに行くくらい。  柊二さん曰く、基本社内恋愛禁止の会社じゃ、  そう派手にベタベタは出来ないし。  咲とは1分1秒だって長く一緒にいたいから、  いっそこっちに引っ越して来いって。  初めてそう言われた時は、何だかプロポーズされた  ような気がしてちょっと気恥ずかしかったけど。  凄く嬉しかった。  いつものように玄関先からじゃれ合いながら  LDKへ入って来て。  そのままカウンターテーブルへ身を乗り出すよう  キッチンのガス台にかかっている  鍋を覗き込んで、匂いを嗅ぐ柊二さん。 「う~ん、今夜はシチューか」 「アタリ。急に冷え込んできたしね」 「じゃ、メシ先にしようかな」 「はーい、ちょっと待ってて」      私はキッチンへ入って手早く配膳の用意をしながら。 「あ、そうだ、柊二さん?今日、何か変わった事は  あった?」 「変わった事?――って、どういう意味で?」  各部署今の時期は人事異動でただでも人手が不足  しているところへ予期せぬインフルエンザの大流行で、  外部の来訪者と接する機会の多い総務の受付係が  特に酷い打撃を受けて、総務課長からの要請で  急遽営業・企画・秘書の3課からピンチヒッターが  送り込まれる事となり。  企画部からははるかさんと私が週を前・後半に  区切って交代でその受付業務にあたっていた。
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