幼なじみのなっちゃん

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「えっと、実は今日のお客様の中にね――」  そう、昨日の今日でなっちゃんは本当に会社へ  やって来た。  しかも、偶然その場に居合わせた社員さん達や  クライアントの方々から不審がられる位  辺りをキョロキョロと偵察していた。 「あぁ――だったらあの男か。うちのホームページの  口コミを見て是非オレ達のチームに  自営のレストランの改装を依頼したいと言って来たんだ」  レストラン??――昨日の話しでは確か、  イベントプロデュースの会社  だって言ってたよね……。 「で、その依頼引き受けたの?」 「いいや、断った。お前も知っての通り、エビスじゃ  俗に言う”一見さん”からの依頼は受け付けてない  からな」 「そう……」  そうだった。  そういう飛び込みのお客さんに限って、  作業終了後に何かと難癖をつけて工賃の値下げ等を  要求してくる事もあるので。  ま、新しいクライアントは喉から手が出る位欲しいけど。  トラブルの種になりそうな人脈は初めから作らない、  というのがエビスの営業ポリシーでもあった。 「あ、もしかして、あの男、咲の知り合いか何かだった?」 「あ――って、ゆうか、昔、清光園にいた人」 「ふ~ん、なら、多少無理してでも引き受けた方が  良かったか?」 「ううん、そんな事ない。知り合いだからって、  いちいち営業ポリシー曲げて  融通効かせてたらキリもないでしょ」  柊二さんは「それもそうだな」と言って、  配膳の終わった夕食を「いただきます」  と食べ始めた。  その時、リリリーン、固定電話のベルが鳴った。
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