知らない女

2/4

79人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「マジか」 大倉の結婚式に呼ばれた俺は、テキトーなスーツにご祝儀だけ持って大阪にたどり着いたものの。 会場のあまりの豪華さに呆気にとられているんだよ。 マルのヤツは「二人ぶんの御車代出さすんが申し訳ないやん」とか意味のわからん気を使って来んかった。ホンマはヤスのそばにいてやりたかったんやと思う。 ちゅうわけで、俺は唯一の知り合いのヨコを待っているんだよ。 亮もヒナも来ないらしいからな。まぁ、あいつららしい。 東京支社の人間は多少面識あるけど、大阪本社の奴らなんて、メールと電話でしか連絡とったことないから、人見知りの俺にはホンマに地獄。 タクシーや外車がばんばん停まるホテルの入り口でこそこそ待っとったら、無料送迎バスからパリッとしたスーツに身を固めたシュッとしたどえらい二枚目が降りてきた。 「すばる、遅れてごめん」 ウソやん!ヨコか。めっちゃ痩せてるやん。どこの王子様か思たわ。 「新幹線一本乗り遅れてん。めっちゃ焦ったわぁ~。もう、めっちゃ走ったから、暑っ、めっちゃ暑っ!」 ああ、やっぱコイツ残念。 「汗スゴイで」 「あ、ハンカチ忘れた」 俺がハンカチ貸したろか、言うたらヨコはなんも言わんと手で乱暴に汗を拭って、そのまま甲を鼻に押し付ける。汗だくのヨコにバスの運転手が「これ、お兄さんの?」って、携帯を渡してきた。 「うわっ!ボクのですわ~。すんません!」 て、照れ笑いしながら携帯を受け取るヨコ見て俺は爆笑。 「ヒナがおらんとホンッマ、アレやなぁ、自分」 「アレを言うてくれ」 ヨコは真っ赤な顔で携帯をポケットにねじ込んだ。 「あっつ!」 「暑中お見舞い申し上げますぅ」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加