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「マジか」
大倉の結婚式に呼ばれた俺は、テキトーなスーツにご祝儀だけ持って大阪にたどり着いたものの。
会場のあまりの豪華さに呆気にとられているんだよ。
マルのヤツは「二人ぶんの御車代出さすんが申し訳ないやん」とか意味のわからん気を使って来んかった。ホンマはヤスのそばにいてやりたかったんやと思う。
ちゅうわけで、俺は唯一の知り合いのヨコを待っているんだよ。
亮もヒナも来ないらしいからな。まぁ、あいつららしい。
東京支社の人間は多少面識あるけど、大阪本社の奴らなんて、メールと電話でしか連絡とったことないから、人見知りの俺にはホンマに地獄。
タクシーや外車がばんばん停まるホテルの入り口でこそこそ待っとったら、無料送迎バスからパリッとしたスーツに身を固めたシュッとしたどえらい二枚目が降りてきた。
「すばる、遅れてごめん」
ウソやん!ヨコか。めっちゃ痩せてるやん。どこの王子様か思たわ。
「新幹線一本乗り遅れてん。めっちゃ焦ったわぁ~。もう、めっちゃ走ったから、暑っ、めっちゃ暑っ!」
ああ、やっぱコイツ残念。
「汗スゴイで」
「あ、ハンカチ忘れた」
俺がハンカチ貸したろか、言うたらヨコはなんも言わんと手で乱暴に汗を拭って、そのまま甲を鼻に押し付ける。汗だくのヨコにバスの運転手が「これ、お兄さんの?」って、携帯を渡してきた。
「うわっ!ボクのですわ~。すんません!」
て、照れ笑いしながら携帯を受け取るヨコ見て俺は爆笑。
「ヒナがおらんとホンッマ、アレやなぁ、自分」
「アレを言うてくれ」
ヨコは真っ赤な顔で携帯をポケットにねじ込んだ。
「あっつ!」
「暑中お見舞い申し上げますぅ」
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