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「帰ろか」
ざわめく会場で俺はすばるに声をかけて、やたらと瀟洒なもんが詰まった引き出物の袋を2つ持つと、すばるが結構な勢いでキレた。
「オイ!俺のとんなや!」
「腕の再手術したばっかりなんやろ?駅まで持ってったるわ」
すばるが瞬きもせんと俺を見つめるから、俺は恥ずかしなって視線を逸らす。と、ええタイミングにポケットの携帯電話が振動した。タッチパネルを人差し指で撫でると、画面には世界で二番目に可愛い目ぇしてるヤツの名前。携帯を耳に押し当ててしばらく待ってんのに何故か向こうは話さない。今日ここに来んかったことを今更後悔しとんのか、お前らしくないな。
「しゃべって」
『どぉ、なった?』
「もう、ムチャクチャや」
『…せやろな』
「新郎、ヤスに浚われたわ」
『えっ、マジで?』
「マジで」
『そっか。そっかぁ…』
「お前どこおるん」
『えっ?』
「どうせ近くおるんやろ」
『あっ、バレてます?』
「バレてます」
『大阪駅におる』
「そこで待っとれ。バスで帰るぞ。新幹線代浮かすからな」
電話を切ると、ニヤニヤした顔のすばるが俺を見上げてる。
「嫁、来てんねや?」
俺は生返事をして重たい紙袋を両手で持ち上げた。
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