午前零時

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「すばるぅ、お待たせぇ」 「おいおい、お前なんぼ抱えてきてんねん」 「これで3日はもつやろぉ」 俺は5、6個積み重ねた紙束をドサッと複合機の前に落とした。 「ヒナ、もうええで。あと俺やるから」 「あんた、できんやろ」 「できるわぁ!なんぼなんでも!」 「んにゃ、何回か詰まらしてもうて、メンテナンス呼んだん、知ってんで」 ぐうの音も出ないすばるを待たせて、俺はバージンパルプ100%の包みをバリッと裂いた。中から覗くすべすべでさらさらの白い紙。俺は反射的に相方の肌を思い出して顔を紙の中に突っこんだ。 「汚れててゴメンナサイ」 俺が入社した時グリーン購入法がナントカで古紙入ってへん紙はアカン言うてたけど、実際混じりっけない紙が一番安いねん。古紙混ぜるぅと工程は多なるから時間かかるわ人件費嵩むわ、繊維が細かなるから強度は落ちるわであんまええことなくて、当時流通してた紙のほとんどがバージンパルプやったらしい。お上の事情に合わせた製紙メーカーが古紙配合率の偽装をしてたっちゅうのは昔の話。 なんの話やったっけ。 そうそう、バージンより使い古しの方が価値があることもあんねんでってコト。俺のハジメテはヨコやから、別にバージンやないとか今更後ろめたくなることもないねんけど。 ちなみにヨコのハジメテは俺がもろたで。『痛いの嫌や』ってめっちゃぐずるから、最近は俺が受けてばっかりやけど。 ヨコはキレーやし、肌なんてホンマこの紙みたいに滑らかやから、抱きたいなって思うことはないわけじゃない。そろそろそういうのんも、言うてもええころかなぁ。まぁ、気持ち良ければどっちでもええねんけど。
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