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『あとで洗う』
なんちゅうて、結局数時間置きっぱなしのヨコのYシャツ。
「どうせやらへんやろぉ?洗っとくでぇ」
て、向こうの返事も待たずに『今一度洗濯いたし申し候』なんて言いながら2人分のシャツの襟元をつけ込み洗いする。じゃぶじゃぶ洗いながらヨコ宛に手紙が来てたん思い出したんで忘れんうちに報告。
「なんか手紙届いてたから机に置いといたでぇ!」
水の音に紛れてヨコの生返事が聞こえた気がしたんで、そのまま洗い続けてると、後ろからがばっと抱き付かれた。
あすなろ抱き?今時流行らんやろぉ。トレンドは壁ドンやで。
「ヨコ?」
「…やった」
「何がぁ」
「俺、やった」
「だから何がぁよ」
「俺、短答式受かったで!ヒナ!!」
「マジでっ?お!うわっ、まだ手ぇ濡れてるって!」
泡だらけの手もお構いなく、ヨコは俺をひょいっと抱き上げて正面向かせてからぎゅうっと抱き込んだ。
「ようやったなぁ、おめでとぉ!」
頭撫でたげたいけど、手ぇびっちょびちょやから俺の胸に顔うずめる白い頬を二の腕でぎゅっと抱きしめ返す。
「もっとほめて」
「もぉ、ほめてるぅやん。頑張ったなぁ、裕君、賢いなぁ~」
「バカにしとんのか」
そう言うて俺を更に引き寄せるヨコの腰の飾りが鞘に収まりきらんくなってんのに気付いた。
「おっきなってるぅで」
「言うな」
「ウハハ!我慢してたんちゃう?勉強に集中できへんから。……せやろ?今日は峰打ちやなくて真剣勝負でいこや」
真っ赤な顔してるヨコの顔を覗き込んだら「俺の鈍ら、受けて立つ気か」なんて洒落たこと言わはる。
「無用の剣は鞘に収めよ……っちゅうても収まらんやろ?」
それを聞いたヨコは子供みたいに笑って、無言で俺を風呂場に引っ張った。
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