ペインキラー

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手術も無事に済んで、あとは安静にてればええって主治医に言われて安心した週末。 「今日、午後非番やから一旦家帰るな」 「おお、帰れ帰れ」 なんて言うた癖に、俺が帰る準備してると、更衣室の窓から見える中庭に、いつもは気にもとめんベンチに座ってボーッとしてはるすばる君がいた。寄ってきた鳩にパンを片手でちぎって与えながら。 「アイヤー!」 て、いつもの奇声が聞こえたかと思ったら、すばる君が急に腕を掻きむしるから、俺は汚れたナース服を投げ捨てて中庭に走った。 「すばるっ!」 俺は目をいつもの倍以上見開いた年上の恋人を抱き込んだ。 ベンチ下に群がってた鳩の皆さんは俺に驚いて一斉に飛び立っていく。 「マル?」 「すぐ戻るから、な?」 「何言うてんねん。帰れよ。…かっゆぅ!この季節に蚊は反則やろ!」 「え?蚊?」 蚊に刺されたんや? 「痒い!」 なんやぁ、驚かせんといてよぉ~。 「血吸う蚊はメスだけらしいで」 「なんやその要らん豆知識」 「マル知識や」 しょーもなって顔して掻こうとする細い腕を掴む。 「掻いたらアカンよ」 「なんでや」 「痕、残る」 赤く膨らみ始めた患部を俺が舐めようとすると、すばる君は体を強ばらせた。 「あ、嫌?」 「あ、いや」 ガーゼとパジャマの隙間に覗く乾いた肌に舌を這わすと、すばる君は俺の腕をぎゅっと掴んでくっついてきたから、俺もちっさい体をぎゅうぎゅう抱き締める。 「マル、ちょうどええ」 「ん?」 「お前、ちょうどええな」 Ah,yeah. 確かめてみーひん?ベロの価値。 ピーカンに晴れてたかと思ったら、どしゃ降りになったり。かと思えば今日の曇天の空みたいに渋く俺を導いてくれたり。 お天気みたいにくるくる変わるすばる君に振り回されるんが、飽きっぽい俺にはちょうどええよ。 「マ…」 ah,yeah! 動き出したら止まらへん。 俺はすばる君の為に処方された鎮痛剤。 早く飲み込まんと、糖衣が剥げて、めっちゃ苦いで。舐めたらあかんねん。毒にもなる大人のクスリやから。 「もっとして」 ah,yeah!! お好みはライト?それともハード? お顔のデフォルトになっとる無精髭を撫でて、口許にできたヘルペスを舐めたら、渋面作って「あ、厭」なんて。 「愛やぁ~!」 病院の中心で、ケモノみたいに叫びました。
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