トナカイ、サンタに拾われる。

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「……言っただろ?俺が、心から想い合える相手になるって」 真剣な眼差しに、思わず息を飲む。 「だから待ちますよ、いつまでも」 「……お、きたくん」 優しく微笑む沖田くんに、涙腺が緩む。 と、思ったら。 「でもそんなに待てませんからね、俺」 「へ?」 「今だってもう耐えられないんです」 お姫様だっこの形で抱え上げられ、至近距離で沖田くんの意地の悪そうな笑みを見る。 「ど、どういう……」 「俺の家、この近くですから大丈夫です。すぐ着きます」 「なっ、ま、待って待って待って……!」 「無理です、待てませんよ」 「ッ、ん……」 落とされる口付けに、あたしの意識は全て持っていかれた。 正しい恋の始まりじゃない。 まだ恋かも分からない。 でも彼が愛しくて、彼が欲しくて、彼が必要で。 求めあうあたしたちの関係は。 きっと、サンタとトナカイたちの関係に似ている。 サンタは彼で、トナカイはあたし。 ――トナカイ、サンタに拾われる。
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