トナカイ、サンタに拾われる。

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……待って、待って待って待って。 真っ黒で艶やかな髪の隙間から見える、嫌に整った顔。 あたしはこの顔に、とっても見覚えがある。 息がし辛いくらい、心臓がバクバクいってる。 「んぁ……?センパイ……、起きてたんですか……?」 「ひっ!」 むくり、怠惰な動きで起き上がる男。 それは。 「沖田く、ん……」 仕事場の後輩、沖田 橙吾(オキタ トウゴ)だった。 「あ、えっと……」 取りあえず布団を掴んで身体の前に当て、沖田くんから距離を置くように後ずさる。 し、知り合いだったの……? ある意味、赤の他人より気まずいんですけど……! 「……何で逃げるんですか」 ムッとした顔で、程よく引き締まった上半身をさらす沖田くん。 「いやあのね、違うの。忘れて、昨日のことは……!」 ジリジリとあたしを壁に追い詰めていく沖田くん。 二日酔いか、痛む頭に昨日の自分の恥ずかしい行動が思い出されて、一気に体温が上がる。
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