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「ちょ、福原……!」
痛切なあたしの声を物ともせず、「美青には言っとく」とあたしのことなんか無視してまたケーキを食べ始めた。
「(アイツ……やっぱり美青との結婚は許せん)」
そうこうしているうちにも沖田くんはズンズンと歩き続け、その沖田くんに腕を引かれたまま店を出る。
無言で、沖田くんのものらしい黒のプリウスの助手席に押し込まれる。
「(いい車乗ってんな……)」
この状況でこんなことを考えられるあたしは、我ながらスゴいと思う。
口を閉ざしたまま車を走らせる沖田くん。
その横顔になんの感情も読み取ることが出来ず、苦しくなるような緊張感だけがあたしたちを包み込む。
「(……話、かけたいけど)」
話しかけられない。
そんな雰囲気の中、車は1つのマンションの駐車場に止まった。
「降りて下さい」
有無を言わさないような口調に怯みつつも、素直にそれに従う。
エレベーターに乗り、3階で降りた。
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