トナカイ、サンタに拾われる。

18/39
前へ
/41ページ
次へ
「ちょ、福原……!」 痛切なあたしの声を物ともせず、「美青には言っとく」とあたしのことなんか無視してまたケーキを食べ始めた。 「(アイツ……やっぱり美青との結婚は許せん)」 そうこうしているうちにも沖田くんはズンズンと歩き続け、その沖田くんに腕を引かれたまま店を出る。 無言で、沖田くんのものらしい黒のプリウスの助手席に押し込まれる。 「(いい車乗ってんな……)」 この状況でこんなことを考えられるあたしは、我ながらスゴいと思う。 口を閉ざしたまま車を走らせる沖田くん。 その横顔になんの感情も読み取ることが出来ず、苦しくなるような緊張感だけがあたしたちを包み込む。 「(……話、かけたいけど)」 話しかけられない。 そんな雰囲気の中、車は1つのマンションの駐車場に止まった。 「降りて下さい」 有無を言わさないような口調に怯みつつも、素直にそれに従う。 エレベーターに乗り、3階で降りた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加