トナカイ、サンタに拾われる。

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「(沖田くん、だ……)」 もう、何で見つけたんだろう。 ドキドキと胸が高鳴り、意識はそっちに集中する。 どうやら誰かと一緒にいるようで、顔を横に向けて何か会話をしているようだ。 その人は、人混みに紛れてよく見えない。 「(誰といるんだろう……)」 妙な野次馬精神がむくりと起き上がり、あたしを急かす。 人混みの隙間を縫うように進み、沖田くんに近づこうと足を動かす。 声を掛けたいわけじゃない、だって何だか気まずいし……。 でも……何でか分からないけど気になるんだもの……。 逸る気持ちを抑えつつ、沖田くんの後ろ姿を追いかける。 その時だった。 「……ッ」 一瞬人混みが途切れて、沖田くんの姿がはっきりと見える。 そして。 「(……知らない、女の人)」 隣にいた人物も、見えてしまった。 背の小さい、ショートカットの人。 それ以外、分からなかった。 ――だってすぐに、彼らに背を向けてしまったから。
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