トナカイ、サンタに拾われる。

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* * * 「……はぁ」 手元にあるのは雪だるまをかたどったサンデー。 半分になった顔の部分にチョコで書かれているつぶらな瞳が、一心にこちらを見つめる。 「……はぁ」 その表情を見て、またため息が零れる。 ――正月休みも終わって、また沖田くんと顔を合わせるようになってしまった。 沖田くんの顔を見る度、ショッピングモールで見たあの光景を思い出してしまう。 あの人は誰なんだろう。 あの人と沖田くんは、どういう関係なんだろう。 この問いで頭がいっぱいになって、胸が締め付けられて苦しくなる。 これじゃあたし、まるで……。 ――沖田くんが、好きみたいだ。 「……違う」 例えそうだとしても、この気持ちにはもう区切りを付けなければならない。 なんとなく続いてしまっている、妙な関係にも。 それを、この前の光景で理解した。 頭を冷やしたくて、アイスを食べるために仕事終わりに会社近くの喫茶店に来たものの、逆に熱くなる一方だ。 クリーミーな雪だるまをかきこんで、伝票を手に立ち上がろうとした時だった。
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