トナカイ、サンタに拾われる。

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「……あれ、大川?」 「え?」 後ろから名前を呼ばれ、反射的に振り返るとそこには。 「やっぱり大川だ。久しぶり」 「……久しぶりだね、直江」 高校の同級生、直江緋絽が相変わらずの無表情で立っていた。 「あれ?大川ってここら辺に勤めてんだっけ?」 「うん、すぐそこ」 「そうなんだ。あ、相席していい?」 「いいけど……」 どうせもう、あたし店出るし。 そう言う前に、「コーヒー1つ」という直江の声があたしの言葉を遮る。 「そういえば、市ヶ谷さん結婚したんだって?福原と」 「……そーだけど」 「ふーん。じゃああの後2人、めっちゃ順調に付き合ったんだね」 「まぁ、ね」 淡々と直江に話しかけられて店を出るタイミングを失い、上げかけた腰をもう一度下ろした。 「やー、凄いね。高校から付き合って結婚するって」 「うん。それはホント凄いと想うけどさ、直江。アンタ、悔しくないの?」 「え?」 直江が目を見開く。 今日初めて見た、表情の変化。
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