トナカイ、サンタに拾われる。

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直江は高校時代、美青に片想いしてた。 告白してフラれたらしいんだけど。 ふとクリスマス・イブのことが頭を掠めて。 ……好きな人が他の男に取られて、悔しいと思ったりしないんだろうか。 「あー、悔しくないと言えば嘘になるかもしんないけど」 「けど?」 言葉を重ねて、その先を促す。 「幸せなんだったら、仕方ないよな」 「……、そっかぁ」 ちょっと悲しそうに苦笑いを浮かべた直江。 でもその顔はどこか吹っ切れたような感じで、そこまで辛そうではない。 「大川は?結婚したの?」 「アンタねぇ、もう少しよく見てから質問してくんない?デリカシーがない!」 左手をズイッと直江の眼前に突き出す。 「あ、悪ぃ。そういえば荒んでるみたいだな」 「何だとコノヤロウ!」 真顔の直江に右ストレートをかましてやろうかとした瞬間。 「センパイ」 「……え?」 右手首を掴まれ、動きが一瞬止まる。 正面に座る直江も、珍しくかなり驚いているようだ。
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