トナカイ、サンタに拾われる。

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「……何してるんですかセンパイ、帰りますよ」 「お、沖田く……」 顔だけで振り返れば、とんでもない怒りのオーラを身にまとった沖田くんがあたしを見下ろしていた。 「早く、立ってください」 「わ」 有無を言わせない口調の沖田くんは、容赦なくあたしの腕を引っ張って無理やりあたしを立ち上がらせる。 「ちょ、代金……」 ズルズルと、あたしを引っ張って連れ出そうとする沖田くんの後ろ姿に声をかけると。 「……お、俺払っとくから。返すのいつでもいいから。まず行け」 ……直江に、気を遣われた。 「……っ、ちょっと、沖田くん!」 「……」 ズンズン進んでいこうとする沖田くんの動きを止めようと、滑る雪道で足を踏ん張る。 「……」 ずっとあたしに背を向けていた沖田くんがゆっくりと振り向き、あたしを見据える。 「……っ、あ」 久々に沖田くんと目が合い、心臓が締め付けられる。 呼んでおきながら無言になったあたしに代わって、沖田くんが口を開く。
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