トナカイ、サンタに拾われる。

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「……もう、新しい彼氏ですか」 「……は、」 スッと細められた瞳が、射抜くようにあたしを見つめる。 予想外の言葉に、一瞬思考が止まるけど。 「な、に言ってんの……」 お正月に見た光景が頭によみがえり、カッと頭に血が上る。 「じ、自分は他の女の人と付き合っててあたしと寝たくせに……あたしには他の男と付き合うなって言うの……!?」 「え……」 困惑したような声を上げる沖田くん。 その表情は、あたしが下を向いてるせいで何も分からない。 でもその声から、何を言い出したんだと感じていることは分かる。 だよね、だってあたしもそう思うもの。 帰宅ラッシュの、人が行き交う道の真ん中で何叫んでるんだ……って。 なのに。 「見たんだから!お正月にショッピングモールで女の人と歩いてるとこ……!付き合ってる人いるくせにあたしには男の人と一緒にいるだけでいつも怒って……意味分かんないのよ!」 止まらなかった。 かすかに残る理性が、何とかあたしの声のボリュームを下げる。
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