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「わんわんっ」
小太郎の声ではっと我にかえる。
ドアに向かって尻尾を振る小太郎。
おそらく外にいるであろう悠人の気配を感じ取ったのだろう。
案の定、数秒して
家のインターホンが鳴った。
私は邪念を振り払うように首を振り、
ぱんぱんと頬を叩いて気合いを入れた。
「はーい」
ドアを開けるともちろんそこには悠人の姿。
仕事帰りだったのか、スーツ姿のままだった。
「え、もしかして仕事帰り?連絡くれたら私ひとりで行ったのに…」
「ばーか、夜に女ひとりなんて危ないって」
「いやでも、仕事で疲れてるのに。しかも、うちの犬なわけだし…」
「ほんとに疲れてる時は言うから。小太郎の散歩、今の俺の癒しタイムだから、奪わないでくれる?」
「…普通そういうのは彼女に求めるもんでしょ。しかも小太郎、雄だし」
「………うるせぇな。ほら小太郎行くぞ」
私からリードを奪い取ると
すたすたと歩き始めてしまう。
慌てて悠人の後を追った。
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