序章 八八艦隊

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昭和12年 10月3日 砲声が轟き、うっすらとした砲煙が湧きだした。 横浜港の沖合いに居並ぶ諸艦艇 連合艦隊旗艦にして、和泉型戦艦の一番艦である「和泉」と、その姉妹艦二隻、和泉型以前に竣工した戦艦二隻、巡洋戦艦四隻が巡洋艦以下の各艦艇と共に、空砲を放ったのだ。 30秒後に2発目が、更にその30秒後に三発目が放たれる。 合計21発が発射された所で、砲声が止んだ。 御召艦「比叡」に座乗される天皇に、最上級の敬意を払って発射された皇礼砲だった。 皇礼砲に続くのは、海軍礼式第六五条の敬礼だ。 「和泉」以下9隻の戦艦、巡洋戦艦、及びその周囲に展開する巡洋艦以下の艦艇群で、号令一下、衛兵隊の捧銃、信号兵による「君が代」の吹奏が行われる。 各艦の乗員は、手空き一同が前甲板から後甲板まで、隙間がないよう、一列に整列し、御召艦が真横に近づいた所で帽子を振り、万歳を三唱する。 横浜港沖合いで、天皇を迎えての連合艦隊観艦式が行われたこの日、ストックホルム軍縮条約が締結され、八八艦隊計画艦全艦の建造が 、国際的にも認められた日から、丁度8年が経過した日のことだった。
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