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*WhiteXmas・1*
「せんぱーい」
雪が降る街。
停めている車の中。
この場に似つかわしくない、何とも間延びした声が、俺を呼ぶ。
「先輩ってば。無視しないで下さいよー」
ピリピリとした緊張感に、思いっ切り水を差す馬鹿は、尚も阿保みたいな声で、俺を呼び続ける。
「せんぱーい。聞いてます?ねえねえ、先輩ってばー」
「るっせえよ!この阿保が!!」
怒鳴りつけると、「なぁーんだ。やっぱり聞こえてたんじゃないですかー」と、臆する事なく、ヘラっと笑った。
「ほら、先輩。雪が降ってますよ。雪ですよ、雪」
「冬なんだ。雪の一つや二つ降るだろうが。そんな事で騒ぐな、ド阿保」
喧しい阿保を無視して、見張りを続ける。
「先輩、全然分かってないですね。これだから、仕事一筋の人は」
呆れた口調の阿保に、底知れぬ殺意が湧いてきた。
「クリスマスイヴですよ、今日。ホワイトクリスマスじゃないですか」
「あ?だから何だよ」
そう返した俺に、阿保が、呆れた眼差しを飛ばして来る。
「クリスマスイヴといえば、恋人の日じゃないですか。そんな日にホワイトクリスマスだなんて、ロマンチックだと思いません?」
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