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「…………ん?あれ……寝てた。」
「(…………起きた。)」
暫くして、その客は体を起こした。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
起き上がって見えた顔が、寝起きの顔をしていた。
そして、息を飲んだ。
男でここまで綺麗な顔の人、いるんだ。
「…………なに。」
カウンターに頬杖をついて、飲みかけのカクテルに視線を落としながら、その人は言う。
……独り言、だろうか。
「ねぇ、右の席のお前に言ってんだけど。」
「…………え。」
驚いた。
さっきまでカクテルを見ていたその目と俺の目が合った。
独り言だと思ったその言葉は、どうやら俺に向けられていたらしい。
そして、横顔ではわからなかったけど、正面で見えたその人の目は、微かに赤かった。
___ドキ。
……あれ、なに、今の。
「なに、俺に何かついてる?」
「……い、いえ。す、すみません。」
俺は慌てて目を逸らして、自分のグラスに視線を落とす。
胸の奥が、訳がわからないほどざわついている。
「……1人?」
でも再び、その声に俺は視線だけを左に向けた。
俺に言ってるのか?
その人の目はもう俺を映していなく、頬杖をついたままカウンターの奥を見つめている。
思わず見とれてしまった。
「だから右の席のお前に言ってんだけど。」
「……あ、は、はい。1人です。」
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