言葉もいらないほどの、

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なんでかはわからない。 けど、このときの俺はきっとおかしかったんだと思う。 「……いいんですよ。女になんかモテなくて。どうせ無理ですから。」 「…………無理?」 「抱けないんです。女が。」 今出会ったばかりの、見ず知らずの男に、何をカミングアウトしてるんだ、俺。 でも、焦りはなかった。後悔もなかった。寧ろなにも感じなかった。 ただ言葉だけが、スラスラと口から漏れていく。 「女とセックスしようとしても、俺反応しないんですよ。今まで告白されてなんとなくつき合ってた彼女とはそれが原因で全滅です。……だから別に、女にモテても嬉しくないです。」 「…………それってつまり、男にはモテたいってこと?」 「……さぁ。認めたくないですよね。そんな男が好きな、周りとは違う自分って。」 すみません。変な話して。 そう謝ってから、最後の一口を飲んで、なにもなくなったグラスを見つめた。 今まで誰にも言わずにいたこと、初めて話した。 でもきっと、これも全て決められた運命だったのかもしれない。 「別に認めてもいいんじゃないの。」 「…………え。」 その突然の言葉の意味がわからなくて、俺はその人に目を向ける。 すると、その人も俺のことを見ていて、必然的に、目が合った。 「俺さ、ある過去を忘れたいから1人飲んで潰れようとしてたんだけど。……もっといい方法、見つけた。だから俺が認めさせてあげようか。」 そして、その誘うような濡れた瞳に、俺は簡単に囚われた。 「俺のこと、抱いてよ。」
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