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「アンタって人はーっ!」
どうやら全く反省してないどころか拗ね始めたので、俺はより一層声を張り上げざるをえなくなった。だがそれすらも見越していたかのように目黒先輩は笑うと、授業の時は教壇に、部活の時は部長の席に代わる台に両手を突いて前のめりになった。黒髪の中のモミジが相も変わらずよく映える。
「ゴメンゴメン。でもまあ、あたしも今度ばかりはさすがに反省したから、まず二人で久しぶりに文学部らしい活動しようと思って企画を用意してきました」
「もう二人しかいないっていう前提で企画練ってる時点で俺泣きそうっす」
「それほどまでこの部活動の行く末を考えてくれるんだね…。入部当初の君とはまるで別人だよ。まっこと、我が文学部は安泰だね」
「先輩がもう少ししっかりしてたらここまで心配はしてなかったと思うっす」
俺がねめあげるような視線を投げかけると、先輩はやはり苦笑した。自覚があるならどうにか改善する心意気を見せて欲しいものだ。
「まあまあ、気を取り直していくよ。まず私達がやるのはこれ!ででん!」
すると先輩は芸人がフリップ芸をやるように台の中から一枚のスケッチブックを取り出し、表紙をめくってなにやら文字が書いてある一枚を見せつけてきた。
「『真剣(マジ)で飯食う五秒前!魔のグルメリポート対決!』……だよ!」
「だよ!じゃないっす…」
俺はその無駄に可愛い声で放たれた意味不明な文字の羅列を見て眉間を抑える。もう早速意味がわからない。字面だけ見れば完全にフリップ芸のそれで、これのどこが文学部の活動に通じるのか今一理解に苦しむ所である。
「大体グルメリポートって何食うんすか。俺弁当ならもうとっくに食べちゃいましたよ」
「案ずるな、私も食べたよ。ママに松茸ご飯にしてほしいと頼んだけど入ってたのは栗ご飯でテンションが下がったけど美味しかったからいいや」
「万年白飯の俺からすればそれでも羨ましい限りで…ってそうじゃなくて!」
「落ち着きたまえよ橋本君。まず私の話を聞いてから質問してくれたまえ」
いつの間にか先輩は全く似合っていない大きめの黒縁眼鏡をかけてドヤ顔でこっちを見てきている。色々言いたいことはあったが何か向こうも言いたげなので、俺は一先ず言葉を飲み込んだ。
「…では、説明を」
「任されたっ。巻きで行くから前置きは飛ばすね。…では、説明しようっ!」
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