Gに捧げる犯罪

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 「どういう事かしら土手川さん」  「私達がモデルって」  「さっきのステージのも書くの?」  丘野、我妻、鈴木の三人が溜まらず取り調べ室になだれ込んで来る。  「待ちんさい刑事の姉や。これは。あくまで予定じゃけまだ正式に決まった訳じゃあ」  「どうかしら、うちには既に一人あなたのオーディションに受かった子がいるんだけれど」  丘野はそう言って一人の名前を指差した。 『七村七美…美人広島県警』  「この七美て、本庁の子なのよね」  丘野はトントンと人差し指で七美の名前を叩く。  「まあその、同じ広島県繋がりでね…美人でバリバリ活躍すると言う条件で承諾してくれたよ」  意外な所で本庁と土手川の繋がりがあったとは、世間の狭さに驚嘆しながらも、九龍は一名の名前が気になっていた。  「日向結羽さんて、高名な画家じゃない。画家とも知り合ってるの?」  日向結羽は現代アーティストの一人でもあり、イラストレーターも兼業しており、土手川の小説の表紙も手掛けている。 幻想的な雰囲気の中、一枚の絵画に人物や動物が表情豊かに描かれていながらも、詫びさびがきいた作品は画家界でも有名だ。  「『ひな探シリーズ』で主役をして貰ったんよね。確か芸術品偽造をテーマにした知的犯罪もので、豊富な絵画や芸術の知識で偽造のからくりを暴いたり、時には犯人の似顔絵を書く事もある」  「よく覚えてるのね?」  凛子は土手川の出演者の名簿に目を通すと、共通項に気が付いた。 何れの出演者もチョイ役や格好悪い役は無く、寧ろ格好良い主役として描かれていると言う事だ。 これでは被害者を殺害する動機が当てはまらない。  「でも、リストアップされた人達から考察すると、この中にはいないようね」  
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