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【3】
「参考までに訊くんじゃが」
今迄執筆して来た小説を足元に、本市は自宅で本庁に貸し出す書籍を本棚から取り出して揃えながら、解せないと言った風に荒川に訊ねた。
「何だい?」
本棚から出した本をダンボールに詰め、それにしてもよく書き散らしたもんだと傍らで思いながら荒川は訊ね返す。
「もし君が、そうだな他の人の役よりそのイケてない役だったらどう思う?」
「普通に凹む。か。先ず君に講義を申し込むだろうね」
「良い役の出演者を殺害して僕を貶めようとは?」
「そうしても僕が良い役を獲得出来る訳でも無いし、第一、殺害する程の理由にはならないかなと。それじゃあまるで学芸会で良い役になれなかった子供のレベルじゃないか」
「学芸会で良い役か」
土手川はふと手を休めた。
「有り難うの荒川君。矢張り君は良いヒントをくれるよ。確か荒川君を主役にした作品では映画を巡って殺人事件が起きた奴で、その時の犯人の動機が、
配役の優劣じゃのうて降板じゃったよね」
「そう。お目当ての役の女優が事故か自殺でいなくなれば自然とその役が回ってくる。だから犯人は被害者を事故死に見せかけて殺害した」
「詰まり今回の犯人は『僕に役を下ろされた人間』書籍に登場しない出演者と言う事になる」
荒川の言葉を皮切りに土手川は次々と推測を展開する。
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