Gに捧げる犯罪

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 「それはこれから出す新作に出演する予定だった人物になる。何故ならロケ中。詰まり執筆中の作品ならば製作を打ち切りにされる可能性があるからね」  荒川は最後の一冊をダンボールに積めると、封をしてポンポンと軽く叩いた。  「新作? 新作と言えば警部の姉やらをモデルにした刑事ものの事かいね。『このミス』にはそう言ったのを書きたいとコメントしたが」  このミス読者は、普通書籍のランキングに興味を抱くものだが、よもやそんな些細なコメントに興味を持つ人間がいるとは――土手川は驚嘆する。  「犯人はそのコメントを読んで君に出演を申し込んだが先約がいて、役を君に下ろされた。それも僕や日向さんみたく主役級の役だ。君のスケジュールを知っていた事や作り方を知っていた事を含めると、君にも接点がある人物にも思えるが」  或種、熱狂的と言うか狂信的なファンの犯行かも知れないと思うと、土手川は急に全身に鳥肌が立ったのを感じた。 S・キングの『ミザリー』のようにそんなファンに監禁でもされたら一溜まりもない。
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