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「畏まりました。罪の味、ですね」
しちマスターはそう言うと、手際良く用意したカクテルの材料を無駄の無い所作で配合し、両手をリズミカルに振りながらS字を描き、土手川のテーブルにスッと差し出した。
瞬時に味と配合を考えられるレパートリーの広さは土手川の小説並だが、厳しいバーテンダーの試験を通過してこの店のバーテンダーとして培って来たしちマスターの熟練の技と勘が裏付けている。
錆び付く所か作る毎にパンチがきいている。
「お待たせしました罪の味です」
「しちさん。前に『冤』を付けてくれると有り難いんじゃが」土手川は緑と青のカクテルを口に含んだ。
「罪は罪、ですから」
「所で何の罪ですか?」真珠はしちマスターにカクテルを注目すると土手川に訊ねた。
「女を泣かせた罪ですか? それとも騙した罪ですか?」
「そうでありたいんじゃが、厭、どっちもいけんが殺人罪なんよね。因みに感動させて泣かせるのと本編のトリックで欺くのは罪にはならんが」
「正確には14人も殺害したらしい」荒川もしちマスターにカクテルを注文すると、神妙な面持ちで真珠に語る。
「荒川君や、主語、忘れてないかい?」
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