Gに捧げる犯罪

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 「世間で騒がれてるあの事件ですか? 未だに犯人が捕まらない」  真珠は桜色に仄かな赤が色っぽいカクテルを口に含み、興味深々だ。  「僕と荒川君は、作品の役を下ろされたファンが犯人だと踏んどるんじゃが」  「新作のね」荒川は青と白のコントラストにチェリーの赤がワンポイントのカクテルを一口。レモンも付いている。 真珠は甘い桜色と思わせて爽やかな酸味のきいた『pokerface』 荒川は色彩は飾り付けをファッショナブルにした『showgirl』 何れもしちマスターのオーダーメイドだ。  「役を下ろされたって、荒川さんが主役の小説みたいです」  「あの荒川さんは好きなキャラでした。実物もですが」  しちマスターはグラスを丹念に磨きながら続ける。  「特にあの台詞。『役が人を輝かせるんじゃない! 人が役を輝かせるんだ!どんな役でも一生懸命演じられなけば、良い役を貰っても結果は同じだ!』……ズシンと響きましたね」  「僕が言われたみたいで、照れるんだけど」  荒川は照れ笑いを浮かべながら、話を本題に戻す。  「兎に角、土手川君と僕はその容疑を晴らす為に警察に協力しているんだが」  「その新作に事件解決の手掛かりがあるんですね。出版されてないから確認しようが無いけど」  「原稿はございますかな?」  しちマスターはグラスを拭き終えて煙草に火を点けた。
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