Gに捧げる犯罪

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 「原稿って、まだ構想の一つしか練ってないんじゃがね」  土手川もメビウスの煙草に火を点けて、頭をかきむしりながら困惑する。  「構想だけでも教えて貰えますかな?」  「私も聞きたいです」  「僕も興味あるね」  真珠と荒川は土手川の新作の構想に興味深々だ。読者としても協力者としても。  「冒頭については荒川君に話してあるから省くとして、だ。今回の事件が僕の小説なら、犯人は有名人のパーティーにちょくちょく顔を出す人物と言えるだろうから九龍刑事は偽のパーティーでそいつをおびきよせる」  土手川に罪を被せた人間も、彼のパーティーに顔を出す所や、ファンとも顔なじみである所から土手川自身はそう踏んだ。  「ドッキリ大作戦みたいです」  「君好みだね」  まあそうなんだが、雑多にいるファンの中から犯人を特定するにはそれが最適なんだよな――土手川はそう思いながら続けようとすると、  「パーティーと言えば、当然カメラマンの出番もあるよね」  「ディーラーの出番もありますよね?」  「バーテンダーは欠かせないでしょう」  三人同時に作品クロスオーバーのオファーが殺到する。
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