第2章

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この微妙な空気、どうしてくれんのよ。 『声が聞きたくなって』って、そんな言葉が言い合える間柄でもないのに。 この男、何言ってんだ? 適当に相槌を打つ私を気にも留めずに、ひたすら大きな声で興奮気味に話しをする社長の声が漏れているのか。 和希の顔がだんだんと険しくなってきた。 立ち上がり冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、その場でプルタブを開けてグイっと飲み始める。 相手はクライアントだとわかってはいるみたいだけど。 こんな時間に、しかも仕事とは全く関係ない話で電話がかかってくるなんて、さすがに良くは思わないよね。 視線を合わせ『ごめんね』と眉をしかめるが、フイッと反らして後ろ手に手を振ると背中を向けてソファーにその身を沈めた。 その後やっとの思いで電話を切ることに成功したのだけれど、当然のことなから2人の熱は再熱するわけもなく。 何だか大変な曲者と関わり合いになってしまったと感じながらも、どうにもならない現実に頭に抱えたのだった。
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