第1章

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長いこと自立女をやって来た私にとって、やっぱり何か一つでも和希にとって自分がしてあげられる事を探したい。 一緒に住んでいてもお互いに仕事が忙しければ、朝に家を出て深夜まで顔を合わせない事だってあるし、下手すると寝顔しか見れないこともある。 そんな私が和希に出来ることは、朝食を作って『行ってきます』のキスをすることくらい。 それがわかっているからこそ和希は決して朝食を作らない。 それが私達のスタンスだ。 2階にあるダイニングキッチンはサブのため少し狭いけれど、2人分の食事を作る分には十分と言える。 今では和希の城の中にある私だけの小さな城。 そんな小さな事が何よりも嬉しいんだから、きっと私は幸せなんだろう。 緩む頬を手のひらで押し上げて、ふふっと笑う。 幸せを噛み締めている間に茹ですぎてしまったアスパラが、ザルの中でヘニャヘニャになってしまっていて焦った。 幸せって…怖い。
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