一章 デートしませんか

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 上条さんは調理センスだけでなく、盛り付けもその発想も何もかもがアーティスティックで、他の店では味わえない何かを持っている。  彼は中卒だけどフランスに単身で渡って向こうで資格を取り、調理師として体当たりで修業して十五年も生きてきた。普通の調理師が経験するようなロードマップを彼は歩いていない。  だから理解しがたくて、うちの調理師たちにとっては、神のような人。  そんな人が俺を……好き?  やっぱり夢だったんじゃないかと思っちゃうぜ。  そんな上条さんに見つめられ、俺はドキドキしつつ「何でもありません」と謝った。  上条さんは不思議そうな顔をした後、知らん顔で皿を仕上げて傍に持ってきた。  俺の隣にいる給仕に皿を出し、持っていくように無言で指示をしてから俺に話した。 「何か悩みでもあるのか? 後で聞こうか」  珍しく優しい声でそうきいてきた。
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