三章 デート中です

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 腹が、きゅるきゅるる、と鳴った。  ナイスタイミング、俺の腹。  その音を聞いて、上条さんはふっとうつむいてしまった。  直後、吹き出して笑われた。  バッドタイミングじゃねーか、俺の腹。  彼と目があって、顔が熱くなった。  恥ずかしい。子どもっぽいぜ。二十三歳にもなって、腹の虫で彼氏に飯をねだる俺。 「何が食えるやろ。あ、サンドイッチを食って」 「車内で食べていい?」 「ええよ。あ、こぼすなよ? 俺も食べたい。あー、アホや。小さいサイズも作ればよかったのに、全部、お前の腹サイズや。片手では食べにくそうやんか」 「むっ……俺のせいにすんな。自分で作ったんだろ?」  渋滞中に喧嘩をするカップルは、きっと俺たちだけではないはずだ。  イライラするし、思い通りに行かないし、どーでもいい小さなことで俺のせいにされても俺だってむかつくし。  険悪な気分になりたくなくても、自然と喧嘩腰になってしまう。  渋滞のマジックだ、これ。
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