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上条さんは調理センスだけでなく、盛り付けもその発想も何もかもがアーティスティックで、他の店では味わえない何かを持っている。
彼は中卒だけどフランスに単身で渡って向こうで資格を取り、調理師として体当たりで修業して十五年も生きてきた。普通の調理師が経験するようなロードマップを彼は歩いていない。
だから理解しがたくて、うちの調理師たちにとっては、神のような人。
そんな人が俺を……好き?
やっぱり夢だったんじゃないかと思っちゃうぜ。
そんな上条さんに見つめられ、俺はドキドキしつつ「何でもありません」と謝った。
上条さんは不思議そうな顔をした後、知らん顔で皿を仕上げて傍に持ってきた。
俺の隣にいる給仕に皿を出し、持っていくように無言で指示をしてから俺に話した。
「何か悩みでもあるのか? 後で聞こうか」
珍しく優しい声でそうきいてきた。
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