喫茶探偵

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多聞はボッサボサの黒髪に茶色い太縁眼鏡という恐ろしく冴えない容貌をしていた。 髪さえすっきりすれば、いくらかましになりそうなものなのだが、生憎本人は興味を持たないようである。 身長だけは高くひょろりとした体型。 祖父は白髪が進みさっぱりした短髪でシャープな顔立ち。またも孫とは真逆の容姿だ。 孫がだらしないのもあるが、多見男は鋭い眼の厳格な老人だ。 バイトの璃世は栗色の長い髪を二つに結び、アメをモチーフにした髪飾りが可愛らしい。性格も好かれやすく、『デイドリーム』の看板娘ともいえる存在で、一番取っつきやすい人種だろう。 一方の兄、英人は頼りなく、金髪のナルシスト。さっきも言ったとおり妹が大好きでいつも多聞が変なことをしないかと目を光らせている。自称イケメンだがモテているという噂は特別聞かない。 「あれ。兄さん、いつもの助手の人は」 璃世の言葉に、英人はふと気づいたらしく辺りを見渡した。 「そういえばいないな……」 その時、ガランガラン、と来客を知らせるベルの音がして、みないっせいに振り向いた。
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