逆さまの十字架

3/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
一旦、『ペット』から手を離し 台所のキッチンの中身を確認すると タッパーに入っているおかずが綺麗なままだった 俺が仕事に行っている間は、冷蔵庫の中のものを食べていて良いと言ったのに… 鎖だって、トイレと台所には行けるよう調節だってしてある 「……さてと、どうしようかな」 冷蔵庫に入れっぱなしのキンキンに冷えた物を空腹の『ペット』に食べさせるわけにはいかない 『ペット』の腹が下ってしまうからだ 痛がっている姿なんて見たくないし、可哀想だ…何か良い物は無いかと周囲を見渡すと 真っ赤な林檎が一つ、机の上にあった だから、林檎と果物ナイフを持って 『ペット』のもとへ戻る 林檎の皮をむき、食べやすい形に分割していく 熟れた林檎から漂う甘い香りに、隣からお腹が鳴る音が聞こえてきた 「ほら、食べな。 お腹空いてんだろ」 小さな林檎を『ペット』の口元まで近づけた どんなに気が強い奴だって空腹には逆らえない だから、すぐに俺の言うことを聞くと思ったが なかなか目の前の林檎をかじらない ならばと、唇に林檎を押しつけてみたが 結果は同じで、溢れる蜜が唇を濡らしても舐めようともしない ただ何度もお腹が鳴る音が暗い室内に響いている 完全に拒絶された俺…… だけど、完全に拒絶されたものほど 調教のしがいがある 俺は林檎を口の中にいれ 『ペット』にもう一回キスをした さっきのとは違い、恋愛感情が無い キス 口の中の林檎を『ペット』の口内へと移す 何度も何度も押し出そうと抵抗してきたが、吐き出す隙など絶対与えない
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!