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…
静かだ
伊織の声はしっかりと響いてる。毎日毎日、努力しかしてねぇんだなぁ、コイツ
…俺は、一人で執着してんのかもなぁ…
「佐山さん、お疲れ様です、ようこそ」
「ちわ。邪魔してすいません。よろしくお願いします」
監督も気付いて俺にこそっと耳打ち。鋭い目付きだ。普段は柔和だと伊織が言ってたけど、なるほど映画の鬼っぽそう
「はいカット!OKです!」
監督の声で緊張が解かれる。起き上がった伊織の背中の砂をリンドウが払って、伊織も何かを言いながら笑った
「…このアバズレが」
「物騒な顔で何て事言うの佐山君、ぶふふ」
戻って来ようと振り向いた伊織と、目が合った
リンドウから何か言われてる。それも聞こえてないように、驚いた視線は俺から離れない
そうだ伊織。俺を見ろ
「…」
「…」
ざわりと周りの声が波立ち、そしてひそりと静まる
無言で睨み合った俺と伊織が、微動だにしなかったからだ
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