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朝日が風に舞う桜の花びらを照らす。
開いた窓からひらひらと舞い降りる花弁はハートの形に見える。
心躍る何かが始まりそうな予感がする--
星蘭(せいらん)高校の新入生三人は噂話に花を咲かせる。
その後ろから春休みの課題を頭の高さまで抱えたおだんご頭に黒縁眼鏡の黒瀬里穂(くろせりほ)が歩いている。
里穂は伊達眼鏡の下で大きな瞳を妖しげに輝かせ、口角をキュッと上げ、不気味な笑みを浮かべる。
一番左にいる二つ結びの少女が一重の目を細め、楽しげに言う。
「でね、この学校七不思議はないんだけど、怪談は一つだけあるらしいよ......」
真ん中にいたショートカットの少女は目をキラキラさせてはしゃぐ。
「何それ!何それ!キャー!
そういうのって、ワクワクするよね~♪」
妙にはしゃぐショートカットの少女に対し、右端にいた三つ編みの少女は冷淡な反応をする。
「子どもっぽいのね。
そんなのによく興奮出来るわ」
ショートカットの少女は口を突きだし、拗ねる。
「いいじゃん!面白いじゃん!
で、怪談はどんなの?」
「それが幽霊少女がね......」
「どいてくれる!?」
どすのきいた声に三人はビクッとし、両脇に避ける。
里穂はチラリと三人を見ると、何事もなかったかのように歩いていく。
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