第3章

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さっきの言葉がぐるぐると回る。 俺にしとけって、どういう意味だ? そのままの意味だろうか? どうしてそんな事を言うんだろう、宮倉は男が好きなはずはないのに。 自分が考え付かない婉曲表現だろうか? 宮倉の手が松浦のコートをゆっくり脱がした。 ネクタイも、シャツも、全て取り去られて寒さに震えた。 まだ部屋が暖まる程暖房は利いていない。 「寒い?」 聞いたこともない優しげな声に頷く。 どうして……さっきまであんなに自分を馬鹿にしていたのに。 宮倉の変わりように付いていけない。 戸惑う松浦を温めるように宮倉は優しく抱き締める。 どうして? なんで? 聞きたい答えはこの、自分を抱き締めた身体が知っている。 それなのに、 それなのに、どうしても聞けない。 自分を抱く熱を逃したくない。 そんな自分が情けなくて、馬鹿だと思う。 それでも松浦は宮倉の中で目を閉じた。
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