第1章

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 腹の中が鉛を呑んだように重い。それだけじゃない。後頭部、肩に泥袋でも乗せられたようにずっしりとした重さを感じる。その重いモノからドロドロとした粘液が漏れ出て身体を伝う。  きつい、気持ち悪い、汚い  いつまでこんな嘘をついていくんだろう。  数えきれない嘘で親友ともいえる奴に性癖を隠しそれを疑う事すらされない自分を造った。  白井の見ている自分の表面に張り付いた嘘、嘘、嘘  吐き気がする。  どうして。  今までそれでよかったのに。それで都合がいいと思っていたのに。  そうだ、告白しようなんてどうかしている。男が好きだなんて聞いた方が困る。そうに決まっている。  「…おい、大丈夫か?」  「うん」  そうだ、大丈夫。噂は無かった。みんな知っているなんて嘘だったんだ。  嘘?そうだ、嘘。ここにも嘘。でもついたのは宮倉だ。何故?  「うん、じゃねーだろ……顔色悪いぞ」  覗き込むようにする白井に少し微笑んで見せる。  まだ心配げな白井は「まったく……」とぶつぶつ言いながらちょうど料理を運んできた女将から皿を受け取った。  テーブルに隙間なく並んだ料理を眺めながら食べよう食べなくちゃと思うのについ意識が宮倉にもっていかれる。  気になる。  自分にあんな嘘をついて、宮倉に何の得がある?  松浦は唇を噛んだ。  自分も良く嘘をつくけれどそれは普通を生きる為であって誰かを傷つけるつもりはないし、このことで困る人間などいない…筈だ。  でも宮倉の嘘は自分を大きく振り乱した。  あの後から今まで自分がどんな気持ちでいたか。  宮倉に言いたい。どうしてあんな嘘ついたんだと責めたい。  でも…、覚えてないからどうしようもない。  怒りは矛先が見当たらず身体の中をぐるぐると回る。自分の体内を傷つけながら。  「ほら、食えよ」  白井が卵焼きの乗った皿を差し出した。  湯気の立つそれはとても美味しそうに見えた。  「ありがとう」
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