第2章

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 宮倉と瀬戸が打ち合わせで階上に行ってしまうと松浦は小さく息を吐いた。  いくら忘れようと思っても頭の中から記憶を消すことは出来ず宮倉の姿が視界の端に入った途端に自然と身体が緊張してしまう。  でもここにいる全員の視線に怯えていた昨日までとは気の持ちようが違う。 宮倉の姿が見えなくなってようやく仕事に集中出来そうだが一段と寒さの深まった朝、暖房の利きが悪くオフィスで指が冷えで硬くなった松浦はまず温かい飲み物を買おうと席を立った。    缶コーヒーを買って近くのソファに座るとポケットの携帯が震え始めた。  見ると紗奈からのメールで、会いたいからちょっと出れないかとあった。  松浦は読みながら眉を潜めた。  白井は昨日紗奈に週末行くと伝えてないのかなあ。  その旨をメールで送るとすぐに二人で話したいから、と返ってきた。  …何の話かな?  もしかしたら白井に内緒で式中何かしようと思っているのかもしれない。  昼に会う約束をして携帯を仕舞った。  缶コーヒーのプルトップを開いて一口飲む。  オフィスに続く廊下にかつかつと軽快な足音が響きそちらを見ると山下だった。  こちらに歩み寄りながら山下は端正な顔に笑みを浮かべた。  モテるだろうなあと思う。  松浦は今まで山下の彼女を見たことがなく、リアルタイムに付き合っている彼女の話を聞いたことがない。でもそういう……雰囲気はある。そういう華やかな、色づいた雰囲気。   「早くもさぼりですかー」  「休憩」  「隣いいですか?」  「ん?山下、さぼり?」  「……休憩です」  くすっと肩を竦めた山下が無糖のコーヒーを持って横に座った。  「なんか顔色いいですね」  「……そうかな」  山下が完璧な笑顔でこちらを見ている。  やや垂れ目を細めた柔らかい微笑み。  10人中10人の女性が惚れるだろうと思う。   「なあ山下ってもてるよな?」  「……は?」  山下は知らない言葉を聞いたような間抜けな声を出した。  「あ、いや……なんとなく」  あれ、仕事中に何言ってんだろ。  コーヒーの缶に口をつけてやり過ごそうとしたのに「あったりまえじゃん」と反対方向から食いつかれた。
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