第1章

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それでもいざ目の前にすると胃がきりきりと痛みだした。  テーブルメニューから目を離さず注文する白井は松浦の様子に気が付かず一通り終えると女将と喋りながらカウンターまで行き、瓶ビールとグラスを抱えて帰ったきた。  「まずは一杯、……飲めそうか」  「うん、少しなら」  体調的に飲みたくはないが精神的に酔いたい。  松浦の前に置いたガラスのコップに半分、白井はビールを注ぎその後自分のグラスになみなみと注いだ。小さい泡がコップの底から一つまた一つと上り弾ける。 縁に表面に弾けきれず残った気泡と弾けられた気泡とどう違うのかな。 行きついた場所なのかな、弾けられるところにいけたかいけないか…… 自分が気泡だったら後者だろうなあと思いながらグラスを見ていると「乾杯するか」と白井がガラスを持ち上げた。 零れそうで見てる方がはらはらする。  「かんぱ……おわっ」  律儀に、というのか松浦にグラスを近付けたその瞬間表面張力がパチンと弾けて琥珀の液体がグラスの外に筋を作る。  「あーあ、もう飲んで」  ひょっとこみたく口を突き出してビールを飲む白井を笑いながら自分も一口飲む。  喉をチリチリさせるのはさっき見た気泡だろう。  「で?」  前から笑いの類が混ざらない声がかかる。ぎくりとして顔を上げると真剣な眼差しと口の端に泡の付いている白井に脱力する。  「……泡、ついてる」  「ん?」  ここと指を差すと白井はごしごし擦りうんと頷いた。大きく頷くから釣られて松浦も頷いてしまった。なんだか可笑しい。  「はーいおまたせ」  突き出しと肉じゃがを盆にのせた女将がやってきた。小鉢をテーブルに並べながら「すぐ卵持ってくるから」と戻って行った。  もうちょっといて欲しかった。  「で?」  うんもう聞くんだな。先をつつくような言い方の「で?」に押されて持ってるグラスを空にした。  「……聞きたいことがあって」  「うん」  分かっていると白井が頷く。またオーバーに首を振る。  「……僕が宮倉をストーキングしてるってどっかで聞いたことある?」  「はあ?」  息をついて胸の靄を吐き出した。聞いた白井は腕組みを解いてテーブルに頬杖を突いて変な声を出した。  「なにそれ」
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