5話

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「丸ごと独立して、別会社をつくることになったのよ」 こともなげに藤井は答えた。 本社総務部へ異動になっていた藤井は、映子を休憩室に呼び出した。 「独立、ですか」 驚くことに円満退職なのだと、藤井はまるで自分の手柄のように言った。 「どう根回ししたのか、想像もつかないけどね」 あの9名。 蝉女にベテランデザイナー、他にも。 羽振と寝た5人の女と、4人の寝ていない女。 まさかの、ハーレムエンド。 「欧米ではチームごと独立とか、別の会社に移籍なんてよく聞くけれどね」 映子は藤井に聞かずにいられなかった。 「藤井さんは、なんで行かなかったんですか」 藤井は答えず、映子に逆に問うた。 「あなたこそなぜ行かなかったの?  あれ程羽振に気に入られていたのに」 映子には藤井の赤い縁の奥の目に、理由の分からない強い光が見えた。 その問いは映子を2か月間悩まし続けていたものだった。 一番認めたくなかった答え。 あのまま一緒にいたら、きっと自分は羽振に本気になってしまう。 映子は笑って答えた。 「わたしは、ゲームには向かない女なんです」 終
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