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木々が生い茂る場所で眠るように倒れている青年がいた。月夜の光が射し込み男性の姿が露になる。まだかなり若く20にも満たない青年だ。
腰まである長い黒髪、一見女性と見間違えしそうな顔立ちをしている。服は武道でもしているのだろうか、黒い衣に袴といった物を身に付けている。
青年―キース・バクスターはう、と呻き暑苦しさに寝返りをうつ。すると、頬に何か冷たい物が触れた。
「うん…?」
まるでキースを起こすかのようにしきりに何かに舐められている感触がして目を開けた。寝ぼけ顔でその方向を向くとそこには狼に似た動物がいた。舌をだらしなく出し、小柄な体躯で自分を見ている。
「は…?」
目を疑った。狼がこんな処にいるはずがない。まだ寝ぼけているのかと思ったが数秒後に、
「うおっ!?」
キースは思わず仰け反ってしまった。間違いない本物だ。やばい、と思うが、小さな狼はキースの動きに驚いたのか草むらの向こうへ逃げていってしまった。それを見て、キースはホッと胸を撫で下ろす。しかし、安心したのもつかの間、キースは辺りを見渡す。自分がいる場所、そこは巨大な樹木で囲まれた場所だった。
「ここは…森?」
なぜ、とキースは思う。確か剣道の帰りだった所までは覚えているのだが。
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