コインロッカー

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そうやって憎まれ口を叩きながらも、そこが私にとっての居場所なのだと思う。素直に言えないけれど、ウギャーといつも騒がしく学校に登校した。 過去なんてどうでもいいと言うのは簡単だ。それは過去に何も背負うことをしない人間の戯れ言だろう。誰だって過去はあるものだけれど、その重みは人それぞれだ。私はまだ、若くて世間知らずな子供だけれど、人を見てきたと思う。 裕福な人間ほど、取り巻きを囲いたがり、引き連れたがる。それに決まって下の人間を見下して、自分の権力を振りかざすことを好む。自分が偉いことを疑っておらず見下されているなんて思っていない。素直に尻尾を振るう者には寛容でも、見向きもしない者には牙を剥きたがる。ようは飼い主と飼い犬のようなもので飼い犬を躾るのが普通だ。素直で、従順な犬ほど好まれる。まぁ、犬が上下関係を重んじる生物だからかもしれないけれど、私は彼女達を見ているといつも思う。彼女達は、一人の偉そうな女に群がる犬共だ。または、餌をもらうために群がる鯉のほうがわかりやすいかもしれない、餌をもらおうとどいつもこいつも尻尾を振って、尾鰭をバタバタと動かすのだ。醜い、醜くて臭い、あいつらからは悪臭がんてクソジジイに言うときっと怒るだろうなと思いながら視線をそちらに向けていると、 「なに見てんのさ、あんた」 と群がる犬共のボスが、私の視線に目ざとく気がつく、さすがボス犬、他者の視線に敏感なこと、めんどくさいことになったと額に手をそえる。手下の犬共もこちらを何事かと視線をぶつけてくる。   「なんでもないから、気にしないでいいよ」 「なんでもないって顔してないんじゃん、もしかして、仲間にいれてほしいわけ?」 まさか、あんたらと仲良くしてたら、こっちまで臭くなるからごめんだ。 「やめなよ、こいつ、あれだよ。ほら、あのもみあげ野郎の」 「あー確か、どっかの捨て子を拾って育ててるってとこでしょ。えらーい、でも、近寄らないでねー臭いからさー」 お前らのほうが臭いよ。もみあげ野郎という名前は賛成だけれどね。まぁ、私はクソジジイって呼ぶけど。 「そのもみあげ野郎ってさ、ロリコンなんじゃない? 善人の顔して性欲丸出しみたいな?」 「あーありえる。自分好みの女に育てるとか? 気持ち悪ーい。そういった奴って死ねばよくね。性犯罪者、マジ、殺してしまえなーんて」 犬共が好き勝手に言い始めた。 
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